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テレワーク導入などが後押し

全国農業新聞
写真はイメージです。記事とは関係ありません。
 コロナ禍で都市部から地方への移住ニーズが高まっている。「密」を避けた新たな生活様式を模索し、人々が居住する場所に求める条件も変わりつつある。
 今後、移住者を受け入れる側の対応はどうあるべきなのか。
 “ウィズコロナ時代”の自治体などの取り組みを紹介する。

 ふるさと回帰支援センター(東京都千代田区)には、40道府県2市が相談ブースを設置し、専門員などが移住相談に応じている。 同センターの嵩和雄副事務局長は、最近の相談者の傾向について、「6月頃は移住への本気度が高い人が多かったが、7月以降はこれまで全く移住を検討していなかった人が増えている」と話す。
 また、地方への移住ニーズが高まっている要因について、「移住先に今の仕事を持っていけるようになったことも大きい」と指摘する。コロナを機に、多くの企業でテレワークやリモートワークが導入された結果、移住先でも仕事ができる環境が整い、転職の必要がなくなっている。

 GoToトラベルキャンペーンの効果もあり、移動自粛の動きは全国的にも緩和されつつあるが、「移住体験ツアー」や「お試し移住」などのイベントは中止・延期している自治体が多い。感染拡大のリスクを考えると、開催しづらいというのが正直なところだ。こうした中、ウェブシステムをうまく活用し、移住体験ツアーを開催する自治体もある。遠隔地からでも現地を訪れている感覚が味わえるよう、工夫を凝らしている。

 長野県伊那市では8月21日にウェブ会議システムのZOOM(ズーム)を利用した「オンラインツアー」を開催した。コロナ禍で同市を訪問できない遠方の移住希望者からの要望に応えるため、同市職員の発案で開催を決めた。
 ツアーには、子育て世代を中心とした約330人がZOOMで参加。市の集落支援員が司会役を務め、市内の幼稚園や小学校、商店街、賃貸アパートを巡って紹介し、リアルタイムで配信した。子供たちが生き生きとした表情で授業を受ける様子や移住者へのインタビューなども好評だったという。
 開催にあたり、事前にフェイスブックなどで告知したところ、全国から500人を超える申し込みがあり、途中で募集を締め切ったという。市地域創造課の担当者は、「予想をはるかに超える反響があった」と驚きを隠さない。
 同市では、今月1日にも2回目のオンラインツアーを開催し、120名が参加した。16日には参加者の関心が高かった伊那小学校を中心に紹介する「オンラインセミナー」も開く予定で、500人を超える申し込みがあるという。

 嵩さんは、「こうしたイベントをきっかけに、移住先へ興味を持ってもらうと同時に、それを実際の移住・定住に結び付けるためには、受け入れる際の地域内ルール作りや、地元住民の合意形成が鍵を握る」と語る。
 例えば、京都府南丹市では、2014年から移住者と受け入れる側の相互理解を促すための情報発信ツールとして「集落の教科書」を作成している。集落の風習や伝統をはじめ、自治会費の金額や共同作業など、移住者向けに地域の“決まりごと”をわかりやすくまとめた冊子だ。
 住民で構成する地域団体が作成し、市が作成費用を補助。旧村単位を基本に、複数の集落をまとめて作成している場合もある。移住者に配布され、「観光ガイドブックなどには載っていない、実生活に役に立つ内容が充実している」と支持を集めている。
 移住者が地元ルールを無視して、近隣住民とのトラブルにつながるケースはこれまでもあった。コロナ禍では、集落内に感染症を広げてしまうことを心配し、移住者の受け入れでトラブルが発生してしまうかもしれない。こうした事態を防ぐためにも、ウィズコロナ時代の移住促進では、地元住民の理解や協力が一層、重要になる。