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農林水産省、1カ月前倒しで提示

農業共済新聞
写真はイメージです。記事とは関係ありません。
 農林水産省は7日、2021年産主食用米の適正生産量を例年より1カ月ほど前倒しして10月中にも示す方針を明らかにした。平年作と見込まれる20年産主食用米の予想収穫量を基にした試算では、大幅な需給緩和が懸念される。産地に対して飼料用米など戦略作物への転換準備を早期に促すのが狙いだ。需給と価格の安定には、21年産の適正生産量を20年産に比べて大幅に削減する必要がある。停滞する飼料用米への転換を促すなど主食用米の過剰作付けを防ぐ対応が急務となる。

 A 自民党が同日に開いた農業基本政策検討委員会(小野寺五典委員長)で、同省の天羽髏ュ策統括官が明らかにした。「麦への転作などを考えて例年より早くお示しする」と述べ、発表時期の前倒しによって需要に応じた生産の実現につなげるとした。
 B 21年産主食用米の需給見通しなどを盛り込んだ「米穀の需給及び価格の安定に関する基本指針案」は、同省が開く食料・農業・農村政策審議会食糧部会で示される。10月15日現在の作柄概況を基に、毎年11月下旬の開催が慣例となっており、1カ月以上の前倒しは異例だ。
 A 20年産主食用米の作付面積(9月15日現在)は、前年産比1万3千f減の136万6千fとなっている。作況指数は全国で101の「平年並み」を見込み、予想収穫量は同8万5千d増の734万6千dとしている。20年産の適正生産量として国が示した709万〜717万dを20万d前後上回る水準だ。需給緩和見込みから米価下落が懸念される。
 B 米穀安定供給確保支援機構が5日に公表した9月の「米取引関係者の判断に関する調査」によると、向こう3カ月間の主食用米の需給動向指数は8月比で5ポイント減の19ポイントとなった。今年1月以降は基準値の50ポイントを下回って推移し、20ポイントを下回るのは米価が下落した14年9月以来6年ぶりとなった。米価水準を示す現状判断指数も8ポイント減の37ポイントとなり、コロナ禍による業務用米の需要停滞など厳しい実態が浮き彫りとなった。
 C 主食用米の適正生産量は、米の消費動向などを踏まえて需給と価格の安定が実現できる水準として設定する。JA全中の試算では、来年6月末の民間在庫量は220万d台を見込み、大幅な米価下落となった13年6月末在庫量(224万d)に匹敵する水準となる。需要量は年間10万d程度減少し続けてきたが、19年7月から今年6月は前年同期比で22万d減となった。このため21年産の適正生産量は700万dを割り込む可能性もある。
◎飼料用・米粉用/作付け拡大へ
 A 需要に応じた生産に向けて飼料用米への転換が進められてきたが、この数年は前年比で面積が減少し、伸びていない。自民党の検討会で発言した宮城県美里町の農事組合法人みらいす青生の齋藤昌徳代表は「飼料用米の作付けが広がらない要因は主食用米との価格差にある」と指摘し、「10e当たりの手取りは主食用米に比べて2万円ほど違う」と述べた。
 B 飼料用米は一定収量を確保しないと採算割れする懸念があるとの声は他産地からも上がっている。水田活用の直接支払交付金の戦略作物助成のうち飼料用米や米粉用米は、収量に応じて10e当たり5.5万〜10万5千円と助成単価に幅を設けている。しかし、収量は天候などに左右されるため、経営の見通しが立てづらいなどの課題がある。
 A 天羽政策統括官は、主食用米と飼料用米の手取り格差について「産地交付金で工夫するべき」とし、地域農業再生協議会が柔軟に活用できるような措置を21年度予算編成の中で議論する方針を示した。
 B 米政策は、18年産から生産者や集荷業者・団体を主体に需要に応じた生産を担う仕組みに変更された。18、19年産は不作傾向による需給の引き締めなどによって米価は均衡・安定的に推移したが、9月15日現在の20年産水稲の全国の作況指数は「平年並み」を見込む。JAによる20年産米の概算金は、前年産比で数百円から千円程度の引き下げとなっている。
 C 13年産のように60`当たり2千円以上下落すれば稲作経営への打撃は大きい。検討会に出席した議員からは「米の政策改革から3年間の経過を検証する必要がある」など現行の米政策を見直す必要性を訴える意見が相次いだ。20年産米の価格下落を防ぐには、21年産主食用米の大幅な作付け抑制が不可欠だ。21年度農林水産予算概算要求では、水田活用の直接支払交付金に前年度と同額の3050億円を計上した。水田フル活用を実現するためには、予算確保だけではなく、飼料用米などに安心して取り組める環境整備が欠かせない。18年以降の米政策を総ざらいし、主食用米の消費拡大も含め、需給の安定化に向けた対策を早急に打ち出すべきだ。