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食品業界ニュース

自主管理V字回復

水産新聞
写真はイメージです。記事とは関係ありません。
 水産資源と海洋環境を「見える化」し、その情報を使って持続可能な
水産業を目指すマリンIT。
 タブレット端末(iPad)に情報入力する「デジタル操業日誌」を
導入した新星マリン漁協なまこ部会は、先駆的なIT漁業として全国から
注目された。
 部会の自主管理でV字回復を果たしたナマコ資源。本格実施から8年がたち、新たな課題解決に取り組んでいる。

 「最初は入力作業が面倒と話す部会員もいた。今では認識が変わり面倒
とは一切思っていない。自ら積極的に使用している」。
 なまこ部会の佐賀友三部会長は、情報を共有し資源を全員で管理する
一体感が生まれ「信頼と結束力が強まった」と続ける。
 導入のきっかけは、初期資源量の解析結果が毎年変化することと、
不安定な漁獲量が連続していたことで、資源の枯渇が懸念されたため。
 2009年までは、手書きの操業日誌に記録した操業位置や漁獲量から、
道水産技術普及指導所と道総研稚内水産試験場が漁獲後に初期資源量を
解析し、その結果を基に翌年の漁獲制限量を決めるという方法で資源管理
をしていた。
 しかし、この方法ではその年の漁獲量が適正だったのか解析結果が出る
まで判別できず、結果的に08年の初期資源量106・1dから69・3dに至る
まで3年間にわたり減少した。
「当時は資源量が減っていた感覚が薄く危機意識も低かった」と振り返る。

 ■iPadに情報入力
  より的確な資源管理の必要性を感じ導入したのが「マナマコ資源管理
 支援システム」。大学、水試などの研究グループが農水省農林水産技術
 会議の委託で開発したもの。けた引船16隻全船にタブレット端末の操業
 日誌とGPSデータを送信するマイクロキューブを搭載し、漁業者は網
 を引くたびに開始・終了時刻、漁獲量を入力。そのデータと位置情報が
 携帯電話を通じてサーバーに送信され、稚内水試管理の下、自動的に
 資源量が計算され漁業者に配信される。
 システム導入で漁期中の資源量をリアルタイムに把握でき、操業計画や
 漁獲量、資源評価、計画見直しという順応的な管理体制が可能となっ 
 た。「獲れた場所や獲れない場所、けたを引きやすい場所など、タブ
 レットを見れば一目瞭然」。佐賀部会長は当時、可視化された情報の
 効率的な使用を確信した。
 導入した10年以降は6月16日の操業始期を7月1日に繰り延べたほか1隻
 当たり漁獲量を5dから3dに削減。漁獲制限体重は100c以上から
 11年に110c以上、13年に130c以上へ上方修正。8月末までの操業は
 半月前倒しとなり、およそ30日だった操業日数は一昨年で12日、昨年
 は11日と大幅に減少した。
 徹底した自主管理の結果、11年に69・3dまで減った初期資源量は翌
 12年に83・8dへ上昇。14年には96dに回復し、以降18年まで90d台
 を維持している。
 08年に63・8dだった漁獲量は最低だった11年の30・6dを底に、翌年
 の44・4d以降40d前後で推移。ここ数年は30d台だが「1人当たり
 1千万円がめど。焦ることなく操業し、漁獲圧をかける必要がない」と
 話す。

 ■資源増は移殖効果も
  資源回復は移殖の効果も大きい。「小型の過密化で成長が遅れており
 沖出ししたい」という部会員の声を反映し15年から開始した。礼受地区
 から瀬越、三泊地区沖合に水揚量の5%ほどを毎年移殖した結果、資源
 量は各地区とも安定。過密場所にスペースが生まれ小型も増えた。
 安定した初期資源量の維持に貢献するマリンIT。稚内水試調査研究部
 の星野昇部長は「漁業者が自主的に資源量を推定し安定した漁獲につな
 げていることが大きな成果」と評価する。この取り組みは全国的に知ら
 れることとなり、佐賀部会長は「視察に来る組合も増えた」と話す。

 ■サイズ修正し間引き
  一方、新たな課題も浮上した。資源量が回復した半面、漁獲サイズに
 満たない60〜80cの個体が「極端に増えてきた」という。移殖効果は
 確実に見られたが「それ以上に後続群が増えた可能性があり、増える
 資源に対して漁獲するサイズや量のバランスが良くないのでは」と心配
 している。
  このため130c以上の漁獲制限体重を、18年から110c以上に下げた。 
 「小型ナマコが増える現象は130cに上げてから。5年が経過した
 時点で漁獲サイズを見直し、中間サイズを間引きすることとした。
 今後は小型をいかに成長させるかが課題。資源状況の変化をしっかりと
 調査しながら資源管理につなげたい」と語る。
 この判断について、星野部長は「蓄積されたデータを基に部会自らの
 調査を踏まえ漁獲サイズを下げた。資源量が豊富なため2年間続けた 
 が、悪影響と感じた場合は130c以上に戻すことを全員が認識している
 。これもデータ管理をしっかり行っている裏付け」と説明。沿岸漁業の
 目指すべき方向性を先駆的に実行し成果を上げてきたからこそできる
 行動として称賛している。