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集落活動の維持へ

農業共済新聞
写真はイメージです。記事とは関係ありません。
 農林水産省は10日、中山間地域等直接支払制度に関する第三者委員会(委員長・図司直也法政大学教授)の初会合を開き、2020年度から始まった第5期対策の検証に着手した。委員からは農村・集落の高齢化や人口減少が進む中で、集落活動の維持が困難になると懸念する意見が相次いだ。活動の継続に向けては、担い手の確保や協定の広域化、サポート体制の強化などに取り組むべきだとした。中山間地域は、農家数、耕地面積、農業産出額が全体の約4割を占め、食料の安定生産のみならず、国土保全や景観維持、災害防止・軽減機能など多面的な役割を担う。
 「田園回帰」の流れを人材確保や体制づくりに結び付け、農村・集落の将来像を描けるような現行対策の充実・強化が求められる。

 A 中山間地域等直接支払制度は、集落などを単位とした協定を締結し、5年以上農業生産活動などを継続する農業者らに面積に応じた一定額を交付する仕組み。2000年の制度創設以来、集落の裁量で活用できる交付金として評価を得ている。
 B 第5期対策では、体制整備単価(10割単価)の受給要件を「集落戦略の作成」に一本化。集落全体の将来像や課題、対策などの話し合いを重視した。また農業生産活動などの継続が困難になった場合の遡及(そきゅう)返還の対象農用地を「協定農用地全体」から「当該農用地」に緩和した。
 A しかし、中山間地域では少子・高齢化や人口減少が平地農業地域よりも早く進む。第三者委員会では委員から、担い手不足による集落機能の低下や共同活動の継続不能など現場の厳しい状況を訴える意見が相次いだ。
 B 第5期対策に盛り込んだ交付金返還措置の緩和については「第5期対策に効果が限定される」と指摘。第6期対策以降の集落協定の減少に歯止めはかからないとの意見もあった。
 C 中山間地域における65歳以上の人口割合を示す高齢化率は34.8%となっている。第3期対策から第4期対策の移行時には、長期的な活動継続への不安から交付面積が3万3千f減少した。地域を支える人材の育成・確保は多くの地域で喫緊の課題だ。
 A 政府は15日、棚田地域振興法に基づく「指定棚田地域」の振興活動計画を初めて認定した。全国に先駆けて石川県2市1町の3地域が認定を受けた。担い手の確保や耕作放棄地の解消、関係人口の創出などを活動目標に掲げる。25年3月までの達成を要件に、第5期対策から新設された棚田地域振興活動加算(10e当たり1万円)を活用できる。
 B 棚田地域振興法は議員立法で19年に成立、施行された。国の基本方針に沿って都道府県が振興計画を策定。申請に基づいて国が指定棚田地域を指定する。指定棚田地域がある市町村は、農業者や地域住民などと協議会を組織して「棚田地域振興活動計画」を作成し、国が活動計画を認定して活動を財政面から支援する。指定棚田地域は7月10日時点で29道県532地域ある。
 C 棚田は、農業生産活動の場であると同時に、地域住民などの共同活動によって守られてきた国民共通の財産だ。全ての指定棚田地域が加算を受けるわけではないが、棚田振興は中山間地域の共同活動強化につながると期待を集める。
◎棚田の維持は防災・減災にも
 A 「令和2年7月豪雨」をはじめ毎年のように大規模災害が発生している。棚田の維持は、雨水を一時的に貯留し、洪水や土砂崩れを防止・軽減するなど防災・減災にもつながる。
 B 中山間地域の高齢化や人口減少の進展は待ったなしの状況だ。条件的に不利な中山間地域では、一度荒廃した農地を再生するのは難しい。中山間地域等直接支払制度をはじめ、関連する支援を活用し、集落や農地をいかに維持・管理していくかが課題だ。
 C 今回認定を受けた石川県の3地域は、ともに新規就農者の確保を振興活動計画に盛り込んだ。地域の未来を託す人材をどのように育成し、地域を支える体制をつくれるかが問われている。また現場だけの取り組みだけではなく中山間地域の活動を後押ししてきた行政職員らの支援体制の再構築も欠かせない。新たな「食料・農業・農村基本計画」では、農村の維持と次世代への継承に向け、所得と雇用機会の確保など、幅広い関係者と連携した「地域政策の総合化」に取り組むとしている。農家を含めた地域の多様な人々が将来にわたって営農や暮らしを支えていける現行対策の充実・強化が急がれる。