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「消滅」予測を覆す

全国農業新聞
写真はイメージです。記事とは関係ありません。
 「限界集落」という言葉が生まれて30年。総務省の調査によると、この4年間で140の「過疎集落」が消滅した。住民の自発的な転居などによる自然消滅が多いが、災害や集団移転などによる消滅もみられる。一方で、消滅を予測されながら転入で人口が増え、活性化した集落もある。限界集落が存続するカギの一つが、集落支援員などサポート制度の活用だ。

 総務省はこのほど「過疎地域等における集落の状況に関する現状把握調査」
(2019年4月1日時点)の結果を発表した。数年ごとに行っているもので、前回は4年前の15年。過疎地域814市町村の集落数は6万3237で、人口は
1035万7584人(平均164人)。前回調査から2203集落(3%)、
112万911人(10%)減少しているが、多くは市町村合併などに伴う集落再編によるものだ。
 地域区分では山間地が32%、中間地が30%と、中山間地が6割を超える。住民の半数以上が65歳以上のいわゆる「限界集落」は32%で、前回調査から10ポイント増加。同75歳以上も6%ある。
 前回調査以降に消滅したのは83市町村の140集落。「自然消滅」が83集落(59%)で、公共工事による集団移転などが9集落(6%)。30集落(21%)は無回答だった。
 前回調査で「10年以内に消滅」と予測された508集落のうち、454集落(89%)は現存している。8割以上が限界集落で、人口9人以下が9割を占めるなど厳しい状況にあるが、151集落(33%)では人口の増減がなく、33集落(7%)
では増えている。
 人口増加の要因は転入。前回調査以降「転入者がいる」集落は全体の40%あり、このうち中山間地が6割を占める。
 過疎集落の維持・存続には、サポート人材の影響が大きい。総務省事業の集落支援員は前回調査の15%から20%に増加。地域おこし協力隊員も17%から22%に増えている。

 人口約4万6千人の島根県益田市は、高齢化率が全国平均の25%を大きく上回る38%。市は14年に人口拡大課を設置し、定住やU・Iターンの促進などさまざまな取り組みをしている。
 注目されるのが「地域魅力化プロジェクト」。人口減少や高齢化で集落の存続が危ぶまれるとの危機感から、20の公民館単位に地区振興センターを開設。地区ごとに課題解決に向けて取り組む、地域自治組織の設立を進めている。センターの運営を担うのが「地域魅力化応援隊員」として活動する21人の集落支援員だ。
 内陸部の匹見地域は、高齢化率が63%で、住民全員が高齢者という集落も少なくない。地域内3カ所の地区センターの一つ、道川地区は六つの集落に人口が
123人(4月末)と20地区の中で一番少ない。高齢化率は56%と匹見地域の中では低いが、平均標高が500bで移動手段や医療介護、冬場の除雪作業など多くの課題を抱えている。
 地域自治組織「道川地域づくりの会」の設立は16年。活動は活発だ。祭りなどの「にぎわいづくり」で交流人口を増やし、「暮らしの安心づくり」では高齢者の見守りや声がけ、配食サービス、高齢者サロンと介護予防を兼ねた「百歳体操」などを行っている。
 広島県出身で03年から道川に住み、公民館職員を経て14年から応援隊員として活動している高田純子さん(61)は「道川に人が住む限り、自分たちでなんとかしなければという思いが強い。若い世代が地域防災などの協議会活動に熱心なので暗さはない」と話す。

【過疎地域問題に詳しい東京都立大学・山下祐介教授の話】
 私の調査では高齢化で消えた集落はない。「限界集落」は家族が近隣の街中や県内で広範に住み分けた結果であって、インフラさえあれば山奥でも暮らせる。
 限界集落問題は高齢者の生活ではなく、次の世代が地域や国土をどう継承していくのかという問題。若い人が地域に戻っていろいろやりたいと思える環境を整えるべき。
 今ある危機対応というより、将来に対するリスクにしっかりと手を打っていかなければ問題は深刻化する。

 限界集落
 65歳以上の高齢者が集落人口の半数を超え、社会的共同生活の維持が困難な状態に置かれている集落。1980年代後半に高知大学の大野晃教授(当時)が提唱した概念。「過疎」というとらえ方だけでは実態を表しきれないと考え、あえて厳しい表現にしたという。