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イノシシ成獣狙って捕獲

農業共済新聞
写真はイメージです。記事とは関係ありません。
 イノシシによる農業被害を防ごうと、山口県宇部市では、市や猟友会、農業関係団体などで組織する宇部市有害鳥獣捕獲対策協議会が、ICT(情報通信技術)を活用した箱わなを設置し、成果を上げている。箱わなに取り付けたセンサーは、一定以上の大きさの動物に反応するように設定でき、被害への影響が大きい成獣のイノシシを狙って捕獲できるのが特徴だ。また、捕獲の情報は管理者にメールで通知されるため、これまで大きな負担になっていた毎日の見回りが不要になるなど、省力的、効率的な捕獲ができると喜ばれている。

 ICTを活用した箱わなは、同市北部の山間部で、特に農業被害の大きい小野、二俣瀬の2地区に計9機を設置。今年1月中旬の導入以来、4月末までに成獣のイノシシ6頭を捕獲している。
 このシステムは、株式会社アイエスイーの「獣サイズ判別センサー式自動捕獲システム」と「長距離無線式捕獲パトロールシステム」で構成され、従来の箱わなに組み合わせて使う。上部に設置したセンサーが温度を感知し、おりに動物が入ったことを確認。動物の背丈を測定し、設定した高さ以上であれば、扉が閉まる仕組みだ。そのため、イノシシの幼獣や他の小動物では反応せず、被害への影響が大きい成獣を狙って捕獲できる。わなの扉が閉まると、近くに設置したパトロールシステムの子機から無線で親機に情報が送信され、管理者にメールが届く。
 有害鳥獣捕獲員として活動し、自身の水田でもたびたび被害を受けてきた同市小野地区の野村敏則さん(60)は「わなは自宅から10`ほど離れた場所にもあり、見回りが大変だった。センサーが付いたことで毎日の確認が必要ないので助かっている」と話す。
 野村さんは地上50aの高さでセンサーが反応するように設定し、体重80`の成獣1頭を捕獲した。「内部にワイヤがないので、警戒されにくいようだ。捕獲したことがメールで分かるので、止め刺しの道具など事前の準備ができるのもメリット」と強調する。
 警戒心が強い成獣は、幼獣より後におりに入る傾向があり、従来の箱わなでは幼獣だけが捕獲されることが多かった。近くにいた成獣は箱わなへの警戒をさらに強めて捕獲が難しくなるという。
 ▼誰でも扱いやすく
 また、イノシシが知恵をつけて内部の仕掛けに触れず、餌だけ食べて逃げられるケースもある。宇部市北部・農林振興部農林振興課林業振興係の河村泰裕主任は「従来の方式では仕掛け方にある程度の経験や工夫が必要だった。センサー式にすることで経験の浅い人でも扱いやすくなる」と話す。
 宇部市では、猟友会のメンバーを有害鳥獣捕獲員に任命。市の嘱託職員として位置づけ、これまでボランティア的な側面の強かった有害鳥獣捕獲の待遇改善を図るなど獣害対策を強化してきた。
 ただ、現在165人いる捕獲員は、半数が70歳以上と高齢化が進んでおり、毎日の見回りなど、わな管理の労力軽減が課題となっていた。
 宇部市の有害鳥獣捕獲数は、2016年度は1102、17年度は
853、18年度は958で、うちイノシシが約8割を占める。
 農業被害額は3千万円前後で推移しており、イノシシの被害は、水稲とイモ類が多い。柵で圃場を囲う対策も進めているものの、頭数、被害額とも横ばいが続いている。
 導入したセンサーや通信設備などICTシステムの費用約190万円は全額、国の鳥獣被害防止総合対策事業交付金を利用した。市では今後、効果を見極めた上で設置拡大を検討する考えだ。河村主任は「捕獲による個体数減と、柵による防護の両面での対策が必要。地域の協力を得ながら獣害を減らしていきたい」と話している。