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さまざまな課題に取り組む経営者

全国農業新聞
写真はイメージです。記事とは関係ありません。
 本紙主催の第6回東南アジア農業事情視察団は1月26日〜2月2日、フィリピンとタイの2カ国を訪れた。フィリピンの人材育成に尽力する農業法人、タイで環境に配慮した農業に取り組む経営者を紹介する。

 【フィリピン】
 首都マニラから約80キロ北上したブラカン州のデゥランファーム(オーナー=デイジー・デゥラン氏)は、野菜や果物、米の生産だけでなく、苗の販売などにも取り組む多角経営農家だ。優秀な観光農園として州から認定も受けている。
 グローバルGAP認証を取得するなど先進的な農家として知られ、「ブラカン州のシードクイーン(苗木の女王)」と呼ばれている。精力的に農業経営に取り組むかたわら、地元の農業後継者や仕事を見つけられない若者の研修にも力を入れている。
デゥラン氏自身も新規就農者だ。デゥラン氏はかつて、丸いかまぼこを串揚げにした子どもに人気のおやつ「フィッシュボール」の露天商で生計を立てていた。就農するという目標を持ち、10年以上露天商を続け、2013年に念願の農家になった。10eの農地を購入しトマトの栽培からスタートした経営は、試行錯誤しながら規模を拡大している。フィリピンには国策で5fの所有制限があるが、農地を効率的に活用しながら経営を発展させてきた。
デゥラン氏が大切にしている研修生の受け入れは、日本との強いつながりがある。デゥラン氏の農場で学んだ研修生はこれまで、約100人が長野県川上村で技能実習生として来日している。デゥラン氏自身もかつて日本で農業研修を受けた。17年に北海道日高町に15日間、東京に5日間滞在し、農業経営を学んだ。日本の先進的な栽培技術や経営ノウハウは現在の経営の礎となっており、自ら受け入れた研修生にも同様の機会を与えたいと尽力している。
 こうしてデゥラン氏は19年までに1万9千人もの研修生を指導してきた。多くの研修生が集まるのは、シニアハイスクールで農業コースを選んだ学生の研修先として定着しているからだ。研修が終わると、農業実業団や農業試験場への就職、海外での実習を希望する人が多い。デゥラン氏の勧めもあり、日本での技能実習制度を活用して研修を希望する若者も増えている。デゥラン氏の娘のアンドレアさんは「日本の受け入れ先は不足している。日本で農業を学びたいブラカン州の若者をどうか受け入れてほしい」と話した。
 
【タイ】
 首都バンコクから約40キロ離れたパトゥムターニー県のクロンルアン農業協同組合(ティーラポングポン組合長)は、地域の零細農家の暮らしを支えている。
 同組合は1977年に設立され、51の組織と千人以上の会員で構成される。農業生産や200品種以上の食品加工、金融業など経営内容は多岐に亘る。この地域は2011年の洪水で大きな被害を受けたが、近年は干ばつによる農業用水の不足が深刻だ。組合の90%の農家が影響を受けており、農業用水の維持や管理に関心が高まっている。
 特徴的なのは米の乾燥方法だ。同組合では七つの巨大な米乾燥貯蔵施設(カントリーエレベーター)を所有しており、籾殻を燃焼させた熱で大量の米を乾燥させる。発生した灰はカリウムを多く含む有機質土壌改良剤として水田に戻し、循環型農業を実現している。日本では灯油などの化石燃料を使うことが多いが、籾殻を燃料にすることで環境に配慮している。カントリーエレベーターはコストの面から米が400d集まったタイミングで稼働させる。
ティーラポングポン組合長は組合の運営に携わるかたわら、自身も農業経営に取り組む。一部集落の農地を含む約16fの水田に長粒種を作付けしている。農地は基盤整備がされており、8割は無農薬栽培だ。環境に配慮している一方、ヒエが生えていたり、倒伏していたりと栽培管理には課題が残る。米は三期作できる地域だが近年は水不足のため二期作できない年もある。収穫量は1f当たり籾ベースで4・5〜5dだ。
 農場には日本製の選別機や精米機が設置されており、近隣農家にも電気代だけで貸し出す。収穫作業は機械化されており、灌漑施設が整備されればさらなる農業経営の発展が望めると話す。ティーラポングポン組合長は地方議員という政治家としての顔も持つ。「農業発展に貢献するため将来的には国会議員を目指したい」と意欲を見せる。