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土着天敵を活用

農業共済新聞
写真はイメージです。記事とは関係ありません。
 高知県農業技術センターは、施設キュウリ栽培におけるIPM(総合的病害虫・雑草管理)技術を開発した。土着のタバコカスミカメを中心とした天敵と天敵類への影響が小さい選択性農薬、防虫ネットなど既存の防除技術を組み合わせ、薬剤抵抗性が問題となっているミナミキイロアザミウマとタバココナジラミの発生を抑制。それらが媒介する黄化えそ病などのウイルス病の発症を軽減する。アザミウマ類を対象とした化学農薬の延べ使用成分回数を4分の1以下に低減できる。同センター生産環境課・昆虫担当の中石一英チーフは「金銭的な出費の他、薬剤散布にかかる人件費や時間といったコスト全体の低減につながる」と話す。
◎温度の下限は12度
 実証試験では、ハウス内温度の下限は12度を目安にした。タバコカスミカメは、キュウリ定植直後の10月初めから中旬までに10e当たり3千頭を2回投入する。十分な数に増えるまでの期間をカバーし、栽培初期に高い防除効果を発揮させるため、天敵製剤のスワルスキーカブリダニも10e当たり5万頭を同時に投入する。中石チーフは「天敵は早めに入れること。温存植物を本圃内に用意するので、ゼロ放飼をしても問題ない」と説明する。
 同センターの調べでは、タバコカスミカメのミナミキイロアザミウマ2齢幼虫に対する1日当たりの推定最大捕食量は、雌成虫165匹、雄成虫で124.8匹と多く、加えてスワルスキーカブリダニが捕食しない2齢幼虫を捕食する。そのため、タバコカスミカメの活用が欠かせない。
 土着天敵のタバコカスミカメを中心とすることで、栽培コストの削減が見込める。市販されるスワルスキーカブリダニは、ハウスキュウリ栽培では10e当たり約3万円必要だが、タバコカスミカメは土着のものを採集・増殖して利用するので、製剤費が発生しない。農薬の使用量も減るので、散布にかかる労力や時間も含めて低減する効果が高い。
◎防虫ネットを展張
 天敵と併用する物理的防除としては、ハウス開口部に0.4_目合の白色または0・6_目合の赤色防虫ネットを展張する。農薬は天敵に影響の少ない選択性農薬に変更。また、黄化えそ病の発病が疑われる株は速やかにハウス外に撤去し、ビニール袋などで密封して蒸し込み、ウイルスが拡散しないよう処分する。
 施設キュウリのIPM技術は、高知県の施設ナス栽培で定着した技術を応用したものだ。前提として、タバコカスミカメを温存、増殖するハウスを用意する必要がある。同県では、育苗などに使用する1e程度のハウスを活用し、雑食性のタバコカスミカメが好むゴマやクレオメを育てることが多い。安芸地方ではグループで10e規模のハウスを使い一括管理する例もある。タバコカスミカメは温存植物を露地に植えて誘引し捕獲できるが、先行する身近な農業者から分けてもらう場合が多いという。
 温存植物は定植前に育てておく。設置する目安は、10e当たりゴマなら50株、クレオメなら20株で、ハウスの谷間など空いたスペースに植栽する。ゴマは3カ月程度で枯れてしまうが、冬季でも生育が旺盛なクレオメを好んで採用する農業者が多い。
 タバコカスミカメは増えすぎると、主に作の後半でキュウリを加害し、果実に害を及ぼす場合がある。実証試験では、うどんこ病やハダニ類の防除に使われ、昆虫類への気門封鎖作用がある「アカリタッチ乳剤」が密度抑制効果を発揮することが確認されている。
 中石チーフは「IPM技術は、見よう見まねで導入すると失敗しやすい。専門家の指導を受け、正しい知識を身につけてからの実践が望ましい」と話す。