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全国組織解散も/環境配慮の後退防げ

農業共済新聞
写真はイメージです。記事とは関係ありません。
 持続可能な農業生産の実現に向けて、環境保全型農業をけん引してきたエコファーマーが岐路に立っている。環境保全型農業の啓発、推進が一定の成果を得たとして「全国エコファーマーネットワーク」は4日、3月末をもって解散すると発表した。エコファーマーの認定件数は2011年度から減少に転じ、18年度は9万5147件とピーク時の半分以下になった。地球温暖化防止や生物多様性保全、国連が定めた持続可能な開発目標(SDGs)の達成など、農業が持つ多面的機能への注目が高まる中で、エコファーマーの取り組みが後退しないよう政策への位置付けを明確化する必要がある。
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 A エコファーマーは、1999年に制定された「持続性の高い農業生産方式の導入の促進に関する法律(持続農業法)」に基づいて、堆肥など有機資材を施用する土作りや、化学肥料・化学合成農薬の低減などに取り組む農家を認定する。都道府県知事に営農計画を提出し、公的なお墨付きを受ける制度だ。
 B 認定件数は、環境保全型農業直接支払交付金の前身である農地・水・環境保全向上対策にエコファーマーの認定が要件化された07年を契機に大きく増加。11年度には21万6341件まで拡大した。しかし、東日本大震災などの影響から減少に転じ、18年度は前年度比1万6717件減の9万5147件となっている。
 A 認定件数が減少した背景には、高齢化が進む中で、更新時に新しい技術の導入を求められることが挙げられる。エコファーマーの認定が農産物の価格優位性につながらなかったことも要因とする指摘もある。
 B 18年にはエコファーマーが環境保全型農業直接支払交付金の支援対象要件から外れ、代わりに「国際水準GAP(農業生産工程管理)の実施」が義務付けられた。認定を受けるメリットが少なくなったことも契機となり、18年度の大幅減少を招いた。
 C 環境保全型農業直接支払交付金は、自然環境の保全に資する農業生産活動の実施に伴うコスト分を支援する制度だ。新たに要件となった国際水準GAPは、食品安全や環境保全、労働安全などの生産工程管理を幅広く規定しているが、化学肥料・化学農薬の削減などは求めていない。エコファーマーからは、環境保全型農業直接支払交付金の趣旨と合致しないとの声も上がっている。
◎特栽や有機栽培の入門編的な役割も
 A 全国エコファーマーネットワークが4日に東京都内で開いた「エコファーマー全国交流会in東京」で、香取政典会長は「環境保全型農業への理解など一定の役割は果たせた。ネットワークの活動は全国の会員が引き継いでいく」とし、解散後もエコファーマーによる取り組みが後退しないよう活動の継続を訴えた。
 B 世界的にも環境保全型農業への関心は高まっている。交流会で講演した明治大学農学部の市田知子教授は、欧州連合(EU)では、農業を通じた環境保全に3段階の支援を設けていると事例を挙げて説明した。「研修などを通して農家自身がどのような取り組みができるかを学べる仕組みがある」と述べ、環境保全型農業への理解が浸透しているとした。
 C 近年では社会貢献活動の一環としてエコファーマーを取得する農家もいる。18年度には新規認定が2300件を超えた。特別栽培や有機栽培などを目指す農家の入門編的な役割もあると話す農家もいる。
 B しかし、環境保全型農業直接支払交付金の実施面積自体は減少している。18年度は前年度比10.8%減の7万9465fと現行制度導入(11年度)以降始めて前年度実績を割った。実施件数も5.6%減の3609件と減少している。
 C 同ネットワークの初代代表を務めた有限会社たじりエコベジタブル(宮城県大崎市)の佐々木陽悦さんは「現状では認定件数は減っていくだろうが、エコファーマーの多様な取り組みは持続可能な農業生産の実現に結び付いている」と強調する。全国に9万人いるエコファーマーが胸を張って営農を続けられるよう、環境保全型農業を推進する政策に位置付け、消費者との結び付きを強める活動を後押しするなど取り組みの強化を図る必要がある。社会的にも意義があるエコファーマー制度を形骸化させてはならない。