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消費者の関心高く作付面積も年々拡大

全国農業新聞
写真はイメージです。記事とは関係ありません。
 今、有機農業への注目度が高い。農水省が3月に中間取りまとめ案を公表した「みどりの食料システム戦略」には、2050年までに有機農業の割合を25%(100万f)まで引き上げると明記された。消費者の関心も高まる中、有機農業の作付面積も年々拡大している。有機農業を長く実践している産地と新規就農者の取り組みを紹介する。

 筑波山麓の里山に位置する茨城県石岡市八郷地区。JAやさと有機栽培部会では、31人の部会員が有機栽培に取り組んでいる。作付面積は50f以上だ。同JAの野菜出荷額の3割以上を有機栽培が占めている。
 同部会の歴史は長く、1997年に設立。年間通して少量多品目の作付けをする地域で、40年以上前から産直が盛んだった。95年にはJAが付き合いのあった生協と「やさと産直BOX」の宅配セットを始めた。特徴ある品目を入れようと模索し、JAが有機農業に取り組んでいた生産者を募り、9人で発足させた。
 同部会の特徴は、部会員の約7割を他地域からの参入者で占めること。設立以来、ほぼ毎年新規就農者が参入している。その理由が「ゆめファームやさと」という研修制度だ。
 この制度は、就農を希望する家族に、JAが1fの農地と農機具を提供。初年度から、栽培から販売までを一貫して学ぶことができる。栽培指導などは部会の先輩農家が担当する。毎年1家族の募集で、期間は2年間だ。
 同JA営農企画課で同部会を担当する酒井健朗さんは「家族単位で募集していることも定着につながっている理由。移住者が多く、ネットワークも作りやすい」と分析。今年で研修生は24期目を迎え、離農者は数えるほどだ。
 2011年に東京都から移住就農した田中宏昌さん(42)も同制度を利用した。田中さんは有機農業を選んだ理由を「安全・安心なものを作りたいという思いはもちろん、資金面でも機械などの設備投資が最小限で済むのも大きかった」と話す。独立初年度から販売を実践できる環境も魅力的だった。「独立後も、部会員に農地を紹介してもらえた。先輩の方々や環境に感謝している」と振り返る。
 現在約1.6fの畑でカブ、小松菜、ホウレンソウ、ネギ、ニンジンなどを有機栽培。同じ品目が市場に少ない時期を狙って作付けている。今後は、規模を4〜5fまで広げ、パート従業員を年間雇用をするなど、経営拡大を見据えている。
 JAのフォローも手厚い。作付けの半年前には栽培希望面積を集計し、販売先などを調整。販路が安定していることで、栽培に集中できている。
 畑4fと田3fで有機農業を実践する岩瀬直孝部会長(62)は、ゴボウ、ニンジン、サトイモなど部会員が作りづらいものを率先して作付けし、全体のバランスも調整している。「SDGs(持続可能な開発目標)などの影響もあり、有機農業の機運が高まっている。地域では高齢化も進む中、今後も取り組みを続け、仲間を増やしていきたい」と話す。

 瀬戸内海に浮かぶ大崎上島(広島県大崎上島町)。3年前に新規就農したふじやファームの藤中夏美さん(26)は、約3.5fでレモンを中心にみかんや柑橘類、オリーブなどを有機栽培している。
 就農前はアパレルの販売をしていた藤中さん。前職で「誰がどんな思いで作ったか」までを伝えた販売をしたいとの思いを持った。先に同島で就農した兄を見て「農業ならそれができる」と就農を決意。「こだわりを持って作った安全・安心な作物を届けたい」と有機農業を選択した。
 初年度は雇用就農だったが、翌年には独立。レモンの栽培を始めた。インターネットサイトを含めた直販を中心に販売している。意識したのは発信だ。藤中さんは「商品の魅力はもちろん、栽培の方法や行程を伝えることを意識している。この人から買いたいと思ってもらえたら」と笑顔を見せる。
 昨年、県の事業により圃場整備された畑2fを借り、レモン経営としては全国でも有数の規模となった。昨年からは「オーガニックレモンマーマレード」や「ジンジャーレモネード」などの加工品を作り、販売も始めた。パッケージのデザインもしている。
 目標は「島で一番の農家になること」。一番が「規模」なのか「品質」なのか、別のものなのかは模索中だ。藤中さんは「有機栽培の魅力や難しさを消費者に伝え、理解を深めたい。非農家出身でも挑戦ができることを多くの人に伝え、有機農業を新しく始める就農者が増えたらうれしい」と目を輝かせる。