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自治体連携し共同で返礼品

全国農業新聞
写真はイメージです。記事とは関係ありません。
 ふるさと納税の寄付額は約5千億円にまで拡大し、財政力の弱い地方自治体にとって貴重な財源だ。農産物などの返礼品による、地場産業振興への効果も大きい。だが寄付額は自治体によって差があり、発信力が問われる制度でもある。そんななか、近年増えているのが自治体間連携だ。自治体の垣根を越えた共同返礼品で、より地域の魅力を高めようというもので、新たな農業ビジネスも生まれている。

福井県北で隣接する坂井市とあわら市は、2020年5月にふるさと納税の共同返礼品に関する自治体間連携協定を締結した。両市で生産される農産物を、共同返礼品として詰め合わせる。「米・若狭牛・卵・旬野菜・加工品の詰め合わせセット」や「5人の米農家による食べ比べ定期便12回コース」など10種類。農産物の包装には二次元コードが貼られ、生産者の顔写真や生産方法などを見ることができる。
 共同返礼品を提供するのは、若手農業者23事業者で組織する「坂井・あわらアグリカルチャー・スマイル・クラブ」(ASC)。会長の齊藤力さん(44)が、芦原温泉の旅館のおかみから「地域の食材を使いたい」と相談を受け、両市の農業者仲間に声をかけて18年に発足した。
 当初、芦原温泉の調理関係者に取引を持ち掛けたが、価格が折り合わなかったため、ふるさと納税に着目した。齊藤さんが役員を務める和牛肥育の泣Tンビーフ齊藤は坂井市にあるが、直営の焼き肉店と、グループの精肉販売会社はあわら市にある。サンビーフ齊藤は両市のふるさと納税返礼事業者で、坂井市に相談して自治体間連携につながった。

 ASCの活動は活発で、返礼品の共同提供にとどまらない。畜産、野菜・果物、米・加工品各チームと、女性農業者グループの合計5グループを編成。循環型農業に力を入れ、販売先の共同化やブランド化、次世代の担い手育成や農業体験の受け入れなど幅広い活動をしている。
 齊藤さんは「一流シェフに選ばれる農産物をつくり、6次産業化にも取り組んでいく」と力を込める。
 坂井市企画情報課の小玉悠太郎主事は「農産物は市域より広い範囲でのブランディングが必要。坂井・あわらエリアで活躍するASCをふるさと納税で応援したい」と話す。

 高知県では、県内各地の12自治体による「ふるさと納税自治体連携協議会」が発足。このうち越知町、安芸市、室戸市、佐川町、いの町、黒潮町、須崎市、中土佐町、四万十市、土佐清水市、香南市の11市町が、共同返礼品「高知のえいもんまるごと定期便」に取り組んでいる。いずれかの自治体で寄付を受けると、月ごとに担当する自治体が特産の農産物などを返礼品として送る仕組みだ。
 返礼品は果物を6回送る「6万円コース」、農産物や農産加工品を10回送る「10万円コース」など3種類。前年に寄付を受け付け、1月から発送する。
 連携のきっかけは、15年に行われたふるさと納税サイト「ふるさとチョイス」の運営会社が行ったセミナーだった。高知県から出席した担当職員による、セミナー終了後の懇親会で「各自治体が単独で頑張っても限界がある」と意見が一致し、同協議会が発足。16年度に5市町で始まり、11市町まで拡大した。オブザーバーとして参加している自治体もあり、関心は高い。
 自治体の広域連携は「高知県が丸ごと楽しめる」と話題になり、寄付額は順調に増加した。返礼品は自治体がそれぞれの返礼事業者の中から選ぶが、生産者の意欲が高まったという。
 より大きな効果は、自治体担当者の意識向上だ。自治体ごとに行うふるさと納税制度は他自治体の情報が少ないが、同協議会は2カ月ごと会合を持ち、情報交換や次年度の企画などを出し合うようになった。イベントにも共同で参加する。
 本年度の事務局である黒潮町産業推進室の山沖慎吾さんは「自治体間連携の効果は大きい。まるごと定期便で、ふるさと納税の底上げを図りたい」と話す。