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食品業界ニュース

死傷事故対策を促進

農業共済新聞
写真はイメージです。記事とは関係ありません。
 農林水産省は8日、農林水産業・食品産業における作業安全対策のための農業事業者向け個別規範案を同日開いた有識者会議の農業分科会に示した。農作業安全の実態を確認するチェックシート案も、事業者向けと事業者団体(生産組合など農業者を構成員とする団体)向けに分けて提示。他産業に比べて死傷事故が多発する農業の作業安全確保のために必要な対策や支援を講じることと、事故発生時に備えることを柱に据える。規範への取り組みは、補助事業などの要件化(クロスコンプライアンス)する方針も明らかにした。新年度からの運用を目指すとしている。

 農業事業者向け個別規範案のチェックシート案は、農作業の現場など、目に付きやすい場所に掲示されることを念頭に置いて作られており、事業者自身が記入する。取り組みやすいよう、「○:実施」「×:実施していない」「△:今後、実施予定」「−:該当しない」の記号4種で書き込むようにしている。
 事業者向けのチェック項目は24個あり、「安全対策の責任者や担当者の明確化」など個々の現場で日常的に留意すべき内容で構成。作業安全確保のために必要な対策は、@人的対応力の向上A作業安全のためのルールや手順の順守B資機材、設備等の安全性の確保C作業現場の整備D事例やヒヤリ・ハット事例などの情報の分析と活用――の順に、五つの項目からなる。農業生産工程管理(GAP)などに取り組んでいる場合は、それらのマンネリ化や形骸化防止に活用されることも想定している。
 実践の基本として、全ての従事者が安全対策を自分事として捉えることを強調。事故防止の研修、適切な技能や免許などの資格取得など体制を整えるよう促す。作業手順や法令の順守も掲げる。引火性のある燃料や農薬、機械や刃物などの適切な保管といった基本的な項目も含めた。
 事故発生時への備えでは、労災保険への加入など補償措置を講じることや、事故後の速やかな対応手順の明文化、事業継続のための方策検討を掲げる。
 事業者団体向けのチェック項目は12個。構成員の作業安全確保のために必要な支援を行うこと、構成員の事故発生時に備えた措置を講じることを大枠に据える。必要に応じて行政や資機材メーカーといった関係機関などの協力を得るよう求めている。
 多面的機能支払交付金など各種補助事業では、作業安全対策への取り組みを要件に求めるクロスコンプライアンス化も始まっている。同省は今後、安全対策の推進強化に伴い、より多くの事業での適用を進める方針だ。
 有識者会議は昨年2月の発足以来3回開かれ、7月に現場の事業者、事業者団体に向けた共通規範が了承された。月内に4回目が予定されており、農業、林業など各産業の分科会での意見を集約し、個別規範をまとめる。共通規範、個別規範ともに2月以降に同省として決定し、周知に取り掛かるとしている。
◎解説/未然防止策の積み重ねが肝要
 農林水産業・食品産業における年間の事故件数は、一般的に事故が発生しやすいと想定される建設業と比較しても高い発生率で推移している。農作業中の事故死亡者数は、2018年までの直近10年間では年間平均345人。うち65歳以上層は同81.2%と大半を占める。農林水産省は、「農業者は一人親方が多く、高齢化も続いていることから、安全衛生管理が行き届きにくい構造が残っている」と分析。作業安全への取り組みを浸透させ、事故件数・事故死亡者数とも減少を加速させたい考えだ。
 個別規範の内容は、事故の発生防止と発生時の対応として基本的なものだ。小さな事故を未然に防ぐことが、死亡事故減少につながる。可能なものから着手し、継続することが肝要だ。
 事故への備えとして、労災保険への加入も欠かせない。法令では、「労働者を使用する法人の事業、常時5人以上の労働者を雇用する個人経営の事業は、労災保険への加入義務がある」と規定されているが、従業員の人数にかかわらず加入し事故の発生リスクに備えたい。けがや病気による収入減少も補償対象とする収入保険への加入も有効だ。
 作業安全は全てに優先する。事業者・従業員ともに意識を高め、一人一人が主体性を持って作業安全に取り組むことが求められる。